7月1日、平成29年度の路線価が全国一斉に発表されました。路線価とは道路に付され、その道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格を算出するための基準となる数字です。今年は全国的に大幅な上昇となりました。なんでもこの上昇率は、あのバブル期の率をも超えてしまったそうです。
北海道では札幌駅前で、地価が12.7%も上昇しました。昨年、札幌駅前の路線価は、1平方メートル当たり312万円だったので、今年は39万6千円ほど値上がりした事になります。更に全国で一番価格が上昇したのは、ニセコ倶知安町で、その上昇率は驚きの77%にもなります!なんと、去年1万円で買えた土地が、今年はいきなり77万円もするのです。ああ恐ろしや、いっそ買っときゃ良かった!!と。
しかし、これはあくまで人気のあるエリアに限定された話で、例えば同じ市内でも、宮の森などは、昨年に比べて地価が下落しています。バブル時には人気だった住宅地も、今となっては坂が多くて冬に苦労するエリアとなり、敬遠されてしまっているわけです。
でも、ここまで土地が上がってしまうと、すわ、バブルの再来か!?と、つい警戒心が出てしまいそうですが、あの時とはいささか事情が違うようです。
1988年、当時は日本中が浮かれていました。私も真っ青なスーツにグラサンをかけて、六本木のディスコで踊っていました。その時の行き過ぎた不動産投資に待ったを掛けたのが、「総量規制」です。総量規制とは、金融機関の不動産向け融資に対する総貸出を基準とした規制で、バブル期の地価高騰と土地投機抑制のため、1990年(平成2)に大蔵省により通達されました。
その結果、銀行による貸し渋りや貸し剥がしなど、その後の日本経済を大きく後退させる要因となりました。まさに蜘蛛の子を散らすかのように繁華街から人が消え、景気の良かった不動産屋の社長が急に行方不明になりました。そこからの言わば「失われた20年」の後、新たな地価高騰を呼び込んでいる今の状況は、当時とはまったく様相が違っています。
今年に入り銀行は、過熱気味の不動産融資に対し、いささか慎重になってはいますが、しかし、それに代わる新たな貸先を見付けられないでいるのも実情です。赤字続きで明日つぶれるかも知れない中小企業に貸し付けるよりも、評価の高い土地、建物を担保で押さえられる不動産に貸し出す方が、貸す側にとってよほどリスクが少ないという事です。
とは言え、バブル時のように5倍も10倍もジャブジャブお金を貸してくれるかと言えば、そうあらず。担保となる不動産の6掛け~7掛け程度の融資額に留めています。ですから、地価がバブル期の上昇率を超えたところで、夜の街で1万円札を見せながらタクシーを止める輩も、クラブでお姉ちゃんに札束をプレゼントする社長の姿も見られない訳です。
次回は、路線価と賃貸アパート、マンションの関係をお話ししたいと思います。
不動産企画部 山口